一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 島原までの一時間ちょいの船の旅。
 
 私はお客様と同じ三階の客室に席を取る。
 
 フッ……と窓から外を見ると、デッキに桑崎紫都がいた。海を見て黄昏(たそがれ)ている。
 疲れるから座っていればいいのに。
 
「うわ。何、あれ」
 
  数分後。他のお客さんが面白そうに身を乗り出して彼女を見ていた。
 
「おー………」
 
 私も流石だな、と思った。
 餌のえびせんも持ってないのに、カモメに囲まれていたからだ。
 
 すっごぉい。
 やっぱり何か持ってるのね。もしかしたら鳥と話せる?
 
 すると、いつの間にか岡田もデッキに出ていて、桑崎に話しかけていた。
 ま、どうせ何か嫌味でも言ってるんでしょ。
 
「………桑崎さん、凄いな。俺、鳥は苦手だからちょっとゾッとする」
 
 いつの間にか近くに来ていた三宅くんが、外を見て、首を横に振っていた。


 
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