一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 私は、すっかりそのガムの主成分を忘れていた。
 
 三宅くんはガムを口にした途端、

「っぐっ!!」
 
 漫画のように吐き出した。それを私がハンカチでうまくキャッチ。
 あ、もちろん捨てるわよ。
 
「大丈夫?! そんなに不味いの?? 」
 
 ゲホゲホ! と涙を流して喉を押さえている。
 言葉も出ないようだ。
 
「何、客、泣かしてるんだよ」
 
 すると、デッキから戻ってきた岡田がジロリと私を睨みながら、わざわざ私達の前の席に座った。
 
 おい。
 デカイ癖に、なんで前なのよ! テレビ見えないじゃん!
 
 まぁ、この状況でテレビは観ないけどもさ。
 隣の三宅くんもようやく落ち着いて、目を閉じた。
 
 疲れたよね。
 そうそう眠りなさい。美形の寝顔で私も癒されるから。
 
 ……しかし。
 
 桑崎紫都は、まだカモメと遊んでるの?
 再び外に視線を移すと、今度は知らないイケメンと桑崎紫都がいい雰囲気になっていた。
 
 ちょっとちょっと!
 
「あれ、誰?」


 
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