一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 私の視線に気が付いた美隆が、何も聞いてないのに話し始めた。
 
「実は2年前、結婚したんだ」
 
 2年前……。
 私がまだ過去を引きずってる間に 、美隆はもう、人生の伴侶を射止めていたんだ。
 
「そう、おめでとう………」
 
 としか言えない。
 
 別に悔しさとかないけど。
 
 どこか上からな目線を送るのは、自分が幸せだという自負があるから?
 美隆は、肩が触れるほど私に寄って、じっと顔を見つめてきた。

「嫁さんの実家からの帰りなんだ」
 
「熊本の人? その奥さんは船内?」
 
  見られたら誤解されるんじゃないの?
  私が咄嗟に離れようとするも、
 
「嫁さんは出産で里帰りだから、この船には一人だよ」
 
  美隆は、ぐっと私の手を握ってきた。

 
 
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