一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
曽木公園の桜も、残念ながら殆ど散ってしまっていた。

「金返せって言いたいよね」

赤石さんを始め、桜目当ての客にぶつぶつ文句を言われて、桑崎さんは「申し訳ないです」と、伏せ目がちに謝っている。

自然には逆らえないのに、気の毒な仕事だよな、ツアー添乗員って。
内心、やってられないと思ってるだろう。


……けれども。

「ゆっくりでいいですよ。少し昇るだけでも滝は良く見えますから」

皆が、ガイドと一緒に曽木の滝へ移動している間、桑崎さんは、足の悪い高齢の客に寄り添って、階段を少しずつ昇っていた。

営業用じゃない、慈しみや、優しさのあるナチュラルな笑顔でーー

この仕事が、好きなんだな……。

俺は、そんな彼女を撮りたいと思った。





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