一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 ちょっとやけになって、 袋から缶ビールを取りだし、やや温くなってそれを、壊れた自販機の前で飲んでいると、
 
「いや、流石にそれはマズイだろー?」
 
 同じツアーの男性客の南条さんと、父子で参加していた息子の方が、話しながらこっちに歩いてきていた。
 
 桑崎さんに執拗に絡んでいた南条さんは、飲みすぎてもうフラフラな様子。
 
「マズくはないさ。せっかく偶然にも部屋が分かったのに。あんただって部屋に誘ってたじゃないか。それに誰にも遊びに来てもらえない、誘っても貰えない女って惨めだと思わないか?」
 
 俺の前を通り過ぎる時、南条さんじゃない方がそんな事を言っていた。
 
 焼酎と、強いニンニク臭が鼻をついた。

 部屋?
 
「俺は女がなびかないと嫌なタイプでね」
 
 首を横に振る南条さんが自分の部屋に戻ると、「チッ」と軽く舌打ちして、もう一人の男はエレベーターに乗って行った。
 
 嫌な予感しかしなかった。
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