一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 エレベーター、5階にいった?
 
 それにしても、アイツ、いつどうやって桑崎さんの部屋を知ったんだ?
 
 こんな時に限って、エレベーターは下から各階停止。
 
 焦れて待っていると、チン! と開いたドアの向こうから、スラリとした身体が見えた。
 
「……あ」
 
 それは、バスの運転士だった。

 ホテルの浴衣ではなく、緩い感じのスエットを着用して、制服の時より若く見えた。
 
 片手にスマホを持って、イヤホンをしていた。
 俺を見て、何故かにやついた顔をしている。
 なんだ、こいつ。
 
「何階?」
 
 イヤホンを片方外した運転士が、階数を聞いてきた。押してくれるらしい。
 
「5階を……」
 
  何となく気まずい。
 
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