一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 結局、木下さんを警察に付き出すことも、旅行を中断させることもしなかった。
 
 だからと言って許したわけではないのだけど……。
 
「あ、ありがとうございました」
 
 二人きりになった部屋で岡田にお礼をいう。
 
 本当にツイていた。
 もし、岡田が部屋を訪れなかったら、私は今頃、あの人と――
 
 そう思ったら、岡田が神様にさえ見えてきた。
 
「ほんとに女ってのは厄介な生き物だよな」
 
 ……のは、一瞬だけで。
 
「……は?」
 
 岡田のバカにしたような顔は、私の感謝の気持ちを薄れさせていく。

「厄介だと思うならどうして助けてくれたの?」
 
「俺は、あのイケメンがトラブルに巻き込まれるのを防いだだけ」
 
  イケメン?
  もしかして、三宅くんのこと?
 
「あの客が、桑崎さんが危ないって教えてきたんだ」
 
「どういうこと?」
 
 
< 72 / 316 >

この作品をシェア

pagetop