一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「霧島神宮は、建国神話の瓊々杵尊(ニニギノミコト)を祀っています。境内には、樹齢800年ともいわれる神木の杉があり……」
 
 今日も、バス内に蛯原さんの元気な声が響く。
 良く眠れたのか、殆どのお客様は、スッキリとした顔をしていた。
 
「毎年、約200本あるソメイヨシノ、ヤエザクラ、シダレザクラが咲きますが、今年はソメイヨシノの後に咲く、シダレザクラに期待しましょう」
 
 初日の桜の名所は散々だったけど、霧島神宮ならイケるかも。
 赤石さんや三宅くん達が、良い写真を撮れたらいいのだけど……。
 
 あ。そうだ。三宅くんに、昨夜のお礼を言わなきゃ。
 
 バスを降りてから、タイミングを見計らって声を掛けよう。

 しかし、その時が来ると、こちらから声を掛けずとも、向こうから近寄ってきた。
 ちょっと、怖い顔をして。
 
「三宅さん、昨夜は……」
「何でアイツがまだいるんですか?」
 
 お礼を言う前に、不機嫌な声で断たれる。
 
「木下さんのこと、よね?」
 
 
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