一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 席に着いた爽やかさ全開の三宅くんを、周りの客が好奇な目で見ていた。

 「……いい子」
 
 ガイドの蛯原さんも、見とれるように振り返って彼を見つめている。
 いや、完全に見とれている。
 怖いくらいわかりやすく、顔が ″女 ″になっていた。
 
 そうか。蛯原さん。彼氏いないって言ってたっけ。
 だからって、業務忘れて見つめ過ぎだよ。
 
  ……私も、ここ四年ほど恋愛はしてないけど、どんなに素敵なお客様や同業者に出会っても、なかなか恋には至らない。
 
 それだけ、仕事場での恋愛には懲りているということだ。

 そう。
 どんなに 素敵な異性がいたとしても、今は恋愛対象としては見れない。
 
 人によっては、同性でもいいのかもしれないけど。
 
  ――ん? 同性?
 
  ハッ!と してドライバーの岡田を見ると、
 

  「わ」
 
 見てる見てる。
 ミラー越しに三宅くんをちゃっかり見つめてる!
 
 その視線、蛯原さんより熱いように感じた。
 
  ……やっぱり。そうなのね。
 
 
 私なりに満足?してから、時間と次の行程を確認。
 
 良かった、予定通りに目的地に向かっている。
 
 9時に熊本港、 それから長い高速の旅、そしてメインの昼食の曽木(そぎ)の滝公園だ。



 
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