一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 韓国人の若いデニムパンツの女の子が、彼氏らしき男性と南条さんに向かって怒っているようだ。
 
 まさか、触った?
 
 南条さんは、「手が当たっただけだろー?」と首を横に振っている。
 まるで痴漢の言い訳。
 
「やめろって!」
 
 こっちはこっちで自撮り棒を振りかざした韓国人が、三宅くんのカメラを奪おうと暴れ出した。
 
 相次ぐトラブルに目眩がしそう……と思ったら、吊り橋が激しく揺れた。

「ァッ! ッシバル!」
 
  悲痛な韓国語が辺りに響く。
  スマホが吊り橋から落ちてしまったのだ。
 
「……あーあ……」
 
 カメラを奪われまいと必死に抵抗していた三宅くんも、川に姿を消したスマホを見て複雑そうにしていた。
 
「申し訳ありません! ここは危険ですので、あちらへ移動してください!」
 
 向こう側から蛯原さんの声が聞こえたの同時に、こちらでは韓国人が三宅くんの胸ぐらを掴んで、ひどく叫び始めた。
 
「落ち着いてください!」
 
 このままでは本当にマズイ。
 
 英語も忘れて、韓国人と三宅くんの間を割ろうとしたら、

「あっ!」
 
 大きな拳が、私の顔面を襲った。


 
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