【中編】ベストフレンド
「待って、拓巳。私も帰るし、一緒に行こう?」
後ろ髪を惹かれる思いで教会を出て程なくして、亜里沙が走って追いかけてきた。
彼女も経理を担当している為、月末は猫の手を借りたいほどの忙しさだ。
俺と同じく有給は取らせてもらえなかったらしい。
駅へと向かう間、会話は自然と陽歌の事になった。
「ねぇ拓巳知ってる?
陽歌ったら結婚後も仕事を続けるつもりだったらしくて、片道2時間の距離を通勤するつもりでいたんですって」
「ゲッ、マジかよ?
あいつの仕事熱心なのは知っているけど、幾らなんでも無理だろう?」
「うん、私もそう言ったのよ。
幾ら隣県で近いとはいえ、一応県外だもんね。
電車で2時間なんて交通網の発達した首都圏なら解るけど、こんな田舎じゃ電車一本乗り遅れたら、1時間は待たなくちゃいけないのよ。
乗り換えのバスだってすぐに無い場合もあるし、残業なんかしてたら帰宅は夜中になっちゃうよ。絶対に無理でしょ?
一応新婚さんで主婦で…おまけに母親なんだから」
「あはは…母親ね。結婚していきなり16歳の息子ができたんだから、陽歌も大変だなぁ。
しかし仕事の事は驚いたな。あいつ責任感の強いところがあるからな」