ピリオド
多くの参列客が座り、拍手をしている。私は今すぐにでも逃げ出したくなった。この結婚に愛はない。あるのは欲望だけだ。

バージンロードの先で総司さんが待っている。その顔には笑み。……警察官は幸せなフリをするのが得意なの?

総司さんに手を取られ、祭壇の前に二人で並ぶ。結婚式はきっと幸せなものだと信じて疑わなかった。私の心は今空っぽだ。

「椿総司さん。あなたは健やかなる時も、病める時も、心春さんを愛することを誓いますか?」

「はい。誓います」

凛とした声が響く。神父さんは微笑みを浮かべたまま、私の方を見て言う。

「降谷心春さん。あなたは健やかなる時も、病める時も、総司さんを愛することを誓いますか?」

頭の中にジョンさんの顔が浮かぶ。もしも隣にいるのが彼なら、きっとこんな思いで答えることはなかった。

「……誓います」

消えてしまいそうな声で私は答える。泣きそうになるのをグッと堪えた。神父さんが口を開く。

「では、誓いのキスを」

総司さんが私のベールを取る。そして、唇が重なった。何も感じない。これはキスじゃない。ただ唇が触れただけ。

祝福の拍手の音が、どこか遠くで聞こえた。
< 6 / 67 >

この作品をシェア

pagetop