マーガレット
 ――起きてください! マーガレット様!

 リアに叩き起こされて何事かと思い身だしなみを整えると、部屋に一人の男性が入ってきた。
 陛下にそっくりな顔で背の高い男性が。

「楽にしてくれて構わない」

「こ、皇太子殿下?!」

 急いでベッドから立ち上がろうとするとヴァルが膝の上に乗り、静止する。殿下もベッドに座ったままでいいと仰ってくださり、背中にクッションを当て楽な体制に。

 皇族と一切関わってこなかった私でさえ目の前の男性が皇太子だってことは分かった。あまりにも陛下にそっくりな見た目に母親譲りの金髪。緑色の瞳と合ってとても綺麗だ。

「すまないが彼女と二人きりにしてくれないか?」

 そうお願いされたリアはすぐに部屋を出て行き、この場には私と殿下、そして犬のヴァルが残った。
 リアが出て行ったのを確認した彼はベッド脇に置いてある椅子に座り、こちらへと視線を向ける。

「今日は兄として君に礼を言いに来たんだ。久しぶりに元気に動き回っている様子が見れて嬉しかったよ。ありがとう」

「いえ。私の方こそわざわざありがとうございます」

 その本人がこの部屋を一度も訪れたことがないのも殿下は知っていた。

 早々に私に礼を言いに行けと言おうとしたみたいだけど、久しぶりに楽しそうな姿を見て両陛下も殿下も言えなかったみたいだ。だからもう少し待ってほしいとお願いされてしまった。

「いつでも構いません。むしろ元気な姿を見せていただければそれで構いません」

「父上が言っていた通り君には欲がないんだな」

「ありますよ? 美味しいご飯を食べたいとか仕事したくないとか。むしろ欲まみれです」

 仕事をせずに何処かでのんびり暮らして、何もせずに美味しい物を食べて暮らすってのが夢。まぁ敵わない夢なんだけど。
家に居るなら結婚しなさいってのが普通だし。

「それなら俺も欲まみれだ。あと剣を握りたいとかもあるな」

 そう言えば殿下は大怪我をして二度と剣が握れなくなったと誰かが言っているのを聞いたことがある。
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