ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「まず、先に男の力を借りて脅しをかけてきたのはあなたのほう。私が彼の力を借りたとしてもこれでイーブン。ずるいと言われる筋合いはないわ」
 慎一が週刊誌とつながりがあると言って脅して来たのだ。虎の()を借りるように彼の力を借りたことになる。

「どうせあんたなんかこの人にも捨てられるわよ。身分が違うんだから。こんな高級ホテル、自力でとったわけじゃないでしょ」
 悔しまぎれの紀香のそのセリフはぐさりと胸に刺さった。
 売れっ子作家と自分が釣り合うわけない。それはずっと思っている。好きなだけでは一緒にいられないかもしれない。

「本を読むだけの陰キャ。なんの才能もない、他人の才能にのっかって自分をインテリに見せてるだけの小物」
 次々と出て来る罵倒に、耀理はとっさに言い返せない。
 口が回らないから本にさらに没頭しているところはあった。頭の中に言葉はたくさんあるのに、何ひとつ声にできない。

「それはあんたのことだろう」
 苦々し気に史弥が口を出す。
「彼女がうらやましかったんだ。知的で奥ゆかしく、インテリな会話ができる。そんな彼女を妬んだから彼氏を奪い、アカウントを奪い、仕事まで奪おうとした。絶対に許さない」
「嘘よ、私がこんなやつに嫉妬なんてしない! でたらめ言わないで!」

「嫉妬……紀香が」
 そんなこと思いもしなかったから、耀理は驚いた。
 見ると、紀香はさらに怒りをたぎらせて耀理をにらんでいる。
 激しい嫌悪と憎悪を見せる紀香に、耀理はある種、拍子抜けした。

 自分はずっと彼女よりも下だと思っていた。だからバカにされているのだと思っていた。
 実際は、ただそれだけではなかったのだ。下であるはずの自分に、紀香のかなわない部分がある。だから耀理を蔑み、下であることを確認せずにはいられなかったのだろう。
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