ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
 思えば、就職した際にもいろいろ言われた。「全国展開する書店で働くなんて耀理にできるわけがない、早めに退職したほうがいい」とか「地元の小さいけれど安定した企業に勤める私は正解だ」とか。就職した企業の規模に嫉妬したのだろう。

 なんだかすごく人間くさい、と他人のように思って大きく息をついた。
 もう、紀香は親友でも元親友でもない。まったく他人だから、こんなふうに思えるんだ。
 耀理はさみしさとともに、微笑みを浮かべる。

「ありがとう。私のこと、そんなふうに思ってくれてたんだ」
「そういうとこ、本当に大嫌い! なんでもいいふうに解釈してお礼を言うの、どうしてそんなにいい子ぶるのよ! その笑顔、気持ち悪いって前から言ってるじゃん!」
 だったらなおさら笑顔でいたい、と耀理は思ってしまう。ただの笑顔が意趣返しになるのなら。

「別にもう、あなたにどう思われてもかまわない」
 耀理の言葉に、紀香は愕然とした。
 その表情に、耀理は思う。
 こんなはずじゃなかったと思っているだろう。自分は紀香の言葉に打ちのめされなくてはならなかった。だから平然としているのが理解できないに違いない。

 紀香はもう自分の憧れではなくなった。未練もない。だから彼女の言葉はなにも響かない。
 きっと以前の自分は紀香に依存していた。明るい彼女の言うことなら間違いないと思っていた自分こそが間違いだった。

「いい子ぶってるんじゃなくて、彼女は本当にいい子なだけだよ」
 耀理の頭を抱いて言った史弥は表情を改める。
「ここからは俺の話だけど」
 怒りが噴き出す彼に、紀香は同じく怒りの目を返す。
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