ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
 店長に内心でお礼をいいつつ、会場となっている場所に向かう。
 少し広くなっているそこにはすでにテーブルがあり、すぐ近くの本棚では月見猫千夜フェアと称してたくさんの溺愛小説が並べられている。コーナーを作ったのは耀理で、なかなかの力作だと自負している。

 本を並べたあと「店員Hの絶対的オススメ!」と書いた紙をまるめて円柱状にして棚の両脇に貼った。表紙をカラーコピーして厚紙に貼ってキャラの形に切り抜き、立体的なPOPを作って目立たせた。

 電飾もしたかったが、断腸の思いであきらめた。安っぽくなってしまっては作品の品位を落としてしまう、と仲の良いバイトに愚痴をこぼしたら、「どんだけ好きなんですか」とバイトに苦笑された。

 意外に知られていない作品に手書きの説明を添えたところ、売り上げが伸びたのが嬉しい。
 もっともっと彼の作品を広めたいが、店員としてはほかの作家の隠れた名作も売りたいし、世の中にはたくさんの名著があって困ってしまう。

 でも今の一番の推しは、やっぱり月見猫千夜だ。
 彼の作品はどれも面白くて、コミカライズも多いし、アニメ化にドラマ化もしている。耀理にとっては雲の上の存在だ。

 彼は三年前に突如として現れた溺愛小説作家で、デビュー当時はあちこちのコンテストで大賞を受賞したためコンテスト荒らしとも言われた。

 性別不詳だが、おそらくは女性。ペンネームからして猫が好きなのだろう。作品にもよく猫が登場するし、自分も猫が好きだから仲良くなれそうな気がする。でも友達になんてなれるわけがないし、この作家はSNSをやっていないからどういう気性の人なのかはわからない。優しい人をイメージしているが、そうではないかもしれない。気難しい人かもしれないが、それはそれで作家さんらしくていいかも、とも思う
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