ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「腹が立つから、売れない雑誌を置く位置にしてやった」
「それ、よくないよね」
 史弥に言われ、耀理はそっぽを向く。

「もしかして、俺のために怒ってくれてる?」
 一冊を手にとった史弥の声は、心なしか弾んでいる。
「だって、あなたは頑張ってるのに」
 ぼそっと言うと、返事がなくて、耀理は妙に思って彼を見た。
 彼は感動したように目を閉じて震えている。

「店内じゃなかったらすぐ抱きしめるのに」
「なに言ってんの」
 耀理はいつものようにツッコミを入れるが、自身の頬が熱くなるのを感じた。
「だけど売り上げを作るのはあなたの仕事だから」
 彼が雑誌を本来の位置に戻すから、耀理も一緒に作業をした。

「でも純文学から逃げてるってのは事実なんだよな。エンタメを書くのが面白いし、みんなが楽しめるならなんでもいいっていうのが一番なんだけど」
「そう……なの?」
「三年前、あなたに出会って俺の世界が変わったから」
 笑顔で言われて、耀理はドキッとした。

 もしかして、自分はとんでもないことをしてしまったのではないだろうか。
 彼はエンタメを書くのが楽しいと言ってくれた。だが、自分と出会わなければもっとたくさんの純文学作品を書いて、後世に名を遺す作家になったのかもしれない。
 先ほどまでは無責任に思えた雑誌の主張が、急に重みを帯びて耀理にのしかかる。
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