腐女子がオフ会で知り合ったのは腐男子でした
あの頃から先輩は絵が上手く、もうプロのレベルに達している人だった。
寧ろこの絵のレベルでデビューできないのがおかしいってくらいに…。
だから、私が先輩に足元も及ばないことは百も承知のはずだったのに、ずっと隣に居たから、感覚が麻痺し始めたのかもしれない。
勘違いしてたと思う。自分もそこそこいけるんじゃないか…って。

「先輩が商業漫画家としてデビューすることになって、嬉しいことなのに素直に喜べない自分がいて…。
いつしか先輩と自分との間にある大きな差に打ちのめされて。
段々、絵を描くことが楽しくなくなっていって、就職を機にそのまま絵を描くことを辞めたんだ」

羨ましかった。自分のなりたいものになれる先輩が…。
私は絵で食べていけないことを分かっていたので、今の会社に就職した。
本当は今だって絵が描きたい。もっと上手くなりたい。
でも、絵を描こうとすると先輩の顔が浮かんでしまい、自分の絵の下手さに落ち込んでしまう。
だからもう絵は描けない。描くことができない。

「でね、今日、先輩の生き生きしている姿を見ていたら、なんだか昔の自分のことを思い出しちゃって…。懐かしくなったっていうお話です」

最後はなんだかこのまま暗い話で終わらせたくないという気持ちになり、適当にまとめた。
こんなまとまりのない話を聞かされても、美咲くんは困ると思う。
それでもなんだか美咲くんには、話を聞いてほしいと思った。

「なるほどね…。茜の気持ちはなんとなくだけど、分かるかな」

え?美咲くんも?!遠慮して話を合わせてくれているだけかもしれない。
それでも、大切な友達から言われると、不思議と卑屈な感情は心の中から消えた。
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