妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

第9話 ノアとの和解

「ノアさんは、何故私を敵視するのでしょうか? 教えていただけますか?」

 首を傾げて聞く私に、ノアくんはしどろもどろになる。まさか私が直接彼に訊ねるとは思っていなかったのかもしれない。
 ノアくんの目が泳いでいる。私はそんな彼の顔をじっと見つめた。

 ここでは目を逸らさない方が良い、そう胸の奥で警鐘が鳴っている。ここが正念場だと勘が働いた。
 最初狼狽えていた彼は、私が何も言わずに凝視するのを見て、言わなければ頑として動かないということを察したようだ。しばらくは視線を合わせないようにしていたノアくんだったが、意を決したのか私に顔を向けた。

「……羨ましかったんだ! 僕だってアダン様と話したいのに……」
 
 初めは叫ぶような声だったノアくん。けれども少しずつ勢いが削がれていったのか、声が小さくなっていく。最後は泣きそうな声……いや、目に涙をためていたので泣いていたのかもしれない。
 どうやら、イルゼさんの推測は当たったようだ。

「僕、お姉さんがアダン様の執務室に入っていくのを見たんだ……僕は入っちゃいけないのに、なんでお姉さんは入って良いんだろうって思って……」

 もしかしたら昼食の時の話だろうか。確かに毎日ではないが……数日に一度の割合で休憩にお邪魔をしていた。レナートからは『アダン様がきちんと休憩を取るので、是非いらしてください』と言われたので、お言葉に甘えていたのだけれど……。

 自分が駄目だと言われているところに、他の人が入っていったら『なんで』って思うことは不思議ではないわよね。
 
「僕だってアダン様と一緒にお昼を食べたいし、お話したいんだ……」
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