妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 私は頭を下げる。
 ノアくんの存在を知らなかったとはいえ、アダン様はそれを抜きでも多忙な方なのだ。私が束縛して良いものではない。
 きっとノアくんのようにアダン様と関わりたい方はたくさんいる。私も少し自重した方が良いのかもしれない。

 ノアくんは黙っていたけれど、しばらくして私に躊躇いがちに声を掛けてくる。

「……僕もお姉さんが悪いわけじゃないのに、意地悪してごめんなさい……」

 彼は申し訳なさそうに項垂れている。更に小さくなっているノアくんの肩に私は優しく手を置く。すると、彼は目を見開いて私を見つめてくる。その瞳には少しだけ涙が浮かんでいた。
 私は布を取り出して彼の涙を拭いながら、微笑んだ。

「大丈夫ですよ。ここで仲直りしましょうか?」

 私の言葉がきっかけなのか、ノアくんの涙腺が崩壊してしまったようだ。抱きついてきた彼の背に、私は優しく腕を回す。そして壊れ物に触れるかのように、頭を撫でた。

「ごめんなさぁい――」

 涙を流しながら、大声で謝るノアくん。
 このやり取りは、声に驚いたイルゼさんが来るまで続いたのだった。
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