妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 涙が落ち着いたノアくんと私は、庭先にあるガゼボでイルゼさんに紅茶を淹れてもらっていた。紅茶を飲んで一息ついたノアくんは、私を上目遣いで見つめている。

「どうしました、ノアさん?」

 思わず私が訊ねると、彼は恥ずかしそうに告げる。

「あの……お姉さんのお名前、教えてもらえますか?」

 そういえば……私はイルゼさんから話を聞いていたから知っているけれど、お互い自己紹介するのはこれが初めてかもしれない。
 
「私はエーヴァと申します。よろしくお願いします」
「僕は……知ってると思うけど、ノアと言います」
 
 そう告げると、視線を宙に彷徨わせていたノアくん。考え事をしているように見えたので、静かに彼の口が開くのを待つ。
 しばらくして、顔を上げたノアくんは私を見据えた。

「あの、僕のこと、ノアと呼んでください! あ、えっとお姉さんは……」

 頬を赤くして話すノアに、私は微笑んだ。そんなに緊張しなくても、大丈夫なのに。むしろ私なんかに固くさせてしまって申し訳ない。
 
「では、私のことはエーヴァと呼んでいただけますか?」

 そう告げると、ノアはまるで花が開いたような笑みを見せた。
 
 
 呼び方も決まり、軽食を取っていた私たち。
 途中からノアは私をチラチラと見始める。こちらから訊ねてみると、どうやらノアは私のことについても知りたいらしい。面白い話でもないので、かいつまんで話ことにする。
 実のお父さんと思えない、という話をした時は呆然としていた彼も、最後には私の話を聞きながら半泣きになっていた。そんな彼を見て、昔の私が慰められたような心地だ。

「なんでそんなことができるんだろう……」

 そう呟いた後、ノアは考え込んでいた。そして何かを覚悟したのか、ぽつりぽつりと話し始める。

「僕は元々地上に住んでいたの。数年前にお母さんが……泉に僕を……そして、ここに来たんだ」
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