妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
「女神様に依頼されて、王国の管理をしているんだろう? なら国王陛下って言っても良いと思うんだがな」
 
 笑って告げるおじ様に、ノアもうんうんと頷いている。
 後でレナートさんに教えていただいたのだが、アダン様は女神デューデ様に依頼されてこの国の管理をしているらしい。アダン様自身は単なる管理人だと思っているようなのだけれど……。国王陛下と同等の仕事をされていることが判明した。
 
 私、大丈夫だったかしら……? と血の気が引いていく。私が串を持ちながら固まっていると、それに気がついたアダン様が私に声をかけてきた。

「どうした? 大丈夫か?」
「え……ええ」
「私は管理人だ。気にするな」

 肩を軽く叩かれて、私はハッと顔を上げる。
 気にするな、と言われても……気にしちゃうのよね。あ、でも国王陛下と呼ばれている本人に許しを得たのなら、良いのかしら……?

 アダン様は私の横を通り過ぎた後、おじ様にお金を渡そうとしていた。相手のおじ様は両手を前に出して拒否の姿勢をとっている。
 きっとアダン様は私のことを気遣って下さったのだ。いつも私を案じてくれるアダン様……心の中が温かくなる。

 串を食べ終えた私たちは、そのまま街を散策していく。
 アダン様はすれ違う街の人たちに声をかけられる。その度に彼は手を上げながら、軽い挨拶をしていた。

 ――その度に彼の表情が柔らかくなっていく。
 
 ノアもそんなアダン様の姿を見て嬉しそうに笑う。そんな二人の姿を見て、胸の奥がざわめく。その瞬間、胸の奥で何かが弾けたように……悟ったのである。
 
 ……ああ、私はきっと、ここに長くいちゃいけないんだ
 
 アダン様は私が地上から降りてきた人だから、優しくしてくださるのでしょう。

 甘えてはいけないのよ。
 役に立たない私は……隣にいていいのだろうか。
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