妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 それから一週間ほど経った頃だろうか。
 昼食を食べ終え、片付けをしている私にアダン様が声をかけてくる。

「この後時間はあるか?」

 その言葉に鳥が豆鉄砲を喰らったような表情をしていたのかもしれない。見兼ねたレナートさんが補足をしてくれた。

「エーヴァ様、本日行商人が王宮を訪れる事になっております。宜しければ、必要な物を揃えてみては如何でしょうか?」
「いえ、私は……」

 そんなに良くしてもらう必要はない、そう告げようとした私よりも先に、レナートさんが話を続けた。

「今回いらっしゃるのは、空の街で商いをしている行商人だそうです。特産品も扱っているとか。……ご興味がおありでしたら、ご覧になってみても良いかと」
「折角だから、僕も見ていい?」
 
 私とレナートさんの話を聞いていたノアが声を掛けてくる。アダン様はノアを見ると、大きく頷いた。

「ああ」
「やったあ! エーヴァ! 一緒に見ようよ!」

 ノアの楽しそうな笑顔を見て、私も少しだけ心が軽くなる。あの首飾りを戴いてから……私はずっと悩んでいたのだ。未だに戴いた首飾りは箱の中。
 一度ノアから訊ねられたのだけれど、勿体無くて箱にしまっていると話した。その話に彼も覚えがあったのか、同意してくれたので、首には掛けていない。
 
 わだかまりが少し晴れるのであれば、気分転換になるかも。
 そう考えた私は、首を縦に振った。

 

 片付けを終えて、私が一旦部屋に戻ろうとすると、ノアとイルゼさんも共に付いてきた。行商人に会うために、着替えをしましょうという話になったのだ。
 普段着ているドレスよりも少し華やかなものに着替えて部屋を出ようとしたところ、外にいたノアがニヤニヤと笑っている。
 どうしたのかしら、と首を捻っていると首に冷たい何かが掛けられた。

 「やっぱ似合うよ、エーヴァ!」

 そうノアに言われて首元を見ると……そこには身につけるのを躊躇っていた首飾りが。どうやら、ノアからアダン様に贈られた物だと聞いたイルゼさんが、気を取られているうちに付けたらしい。

「行商人に会うんだったら、首飾りくらいは身につけないと!」

 二人の迫力に押されて、私は首飾りを身につけたまま行商人と会うことになった。
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