妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

第12話 暗い影

 ノアと私は二人で行商人の元へと向かう。
 レナートさんに伝えられた部屋へ辿り着くと、既に商人は来ていたらしく、部屋に商品を並べている最中だった。私たちが部屋に入ると、男性は揉み手をしながら近づいてくる。

「おや、ノア様。お久しぶりでございます」
「商人ってイグナスだったんだ! 久しぶり!」
 
 ノアとイグナスさんは顔見知りだった。ノア曰く、家庭教師がつく一年ほど前までは、商品を見るのが楽しみでアダン様やレナートさんに付いて見ていたのだとか。
 家庭教師が付いてからは、勉学の時間が決まっていたため時間が合わなかったという。

「イグナスの商品は、面白い物が多いんだよ!」
「今回もノア様が好みそうな物を見繕ってきましたよ」
「イグナスありがとう!」

 楽しそうに話すノアに、穏やかな笑みで商品の説明をするイグナスさん。私も初めて見る商品の数々にいつの間にか目を奪われ、彼の説明を聞き入っていた。

 ノアが目を惹かれるのも分かる気がする。
 私は商品をじっと見つめながら、感じていた。

 ネレイダの街はどちらかと言えば、水に関係する街。そのため、装飾品などは青系のものが多かったりする。一方空の国は、水色や白色だけでなく、黒や黄色、赤など様々な色が目を楽しませてくれた。
 テーブルの上に置かれた商品を一通り説明したイグナスさんは、後ろに控えていたお付きの方へと声をかける。

「そろそろノア様にいつものアレを」
「畏まりました」

 その言葉にノアの目が光り輝く。いつものとはなんだろうか。
 
「ノア様、以前と同じように他の物は奥の部屋に用意させておりますので、ゆっくりとご覧下さい」
「ありがとう!」

 ノアは楽しげにお付きの方の後ろをついていく。商品が気になって私も立ちあがろうとしたところ、イグナスさんに止められた。

「エーヴァ様には別途に私からご用意させて戴いた物がございます。また後でノア様の元にお連れしますので、お待ち頂いても宜しいでしょうか?」
「分かりました」
 
 中途半端に立ち上がっていた私は、姿勢を正す。
 そして目の前に出された色とりどりの装飾品に視線を送った。
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