妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 瞼が重く感じる。
 疲れているのだろうか……もう少し寝てしまえばいい。そう思っていた私だったけれど、喉の渇きには勝てず目を開ける。
 そこには見覚えのある天井があった。

 私は何故ここに……?

 そう思った時、ベッドの横から聞き覚えのある声が耳に入った。

「……アダン様! エーヴァが目を覚ました!」
 
 涙声のようなノアの声。私は声の方へゆっくりと頭を動かす。身体全体に倦怠感があるのか、普段のように身体を動かすことができなかった。
 やっとのことでノアの顔を見た私は息を呑んだ。ノアは目に涙を溜めて私を見ていたのだから。

 足音は段々と近づく。視界に入ってきたのは、アダン様だった。
 彼は今までに見たことがないほど、眉間の皺が寄っている。私が言葉を話せずにいると、ノアが叫び声のような言葉を発した。

「エーヴァ、大丈夫?!」
「……ええ、大丈夫です……」

 身体に力が入らない状況ではあるけれど……それ以外の不調はない。そう思って私が答えると、ノアの頬に涙があふれ落ちていく。そして声をあげながら泣きじゃくっていた。
 私が目を見張っていると、ノアは悲痛な声を上げ始める。

「エーヴァ、死ぬところだったんだよ! なんで、どうして、あんなことしたの?!」
「え……?」

 そういえば……あの場所へ着いたその後の記憶が全くない。
 あんなこと、とは何だろうか……そう考えて悟った。あの場所は泉と国の境界線。つまり、私は泉へと踏み込もうとしたのだろう。
 泉の中は女神デューデ様の加護はない。つまり、私は――。

 顔から血の気が引いていく。そうだ、あの後私は取手のようなものを掴んだ記憶がある。そして泉の中に足を踏み入れていた。
 息ができず苦しくて苦しくて……ふと目を開けると遠くに光が見えた。私はそこに向かおうと手を伸ばそうとして、左手を誰かに勢いよく引っ張られて……。
 俯いていた私は、アダン様へと顔を向ける。彼の顔をよく見ると、眉間に皺を寄せているだけでなく、目尻も下がっていた。

 大声で泣き叫ぶノアと心配してくれているアダン様の姿を見て、自分の行動に自責の念を感じていた。特にノアに関しては、私を慕ってくれていた。彼の心を傷つけてしまったのだ。
 私はベッドに伏せて泣いているノアにそっと触れる。
 
「ごめんなさい……」
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