訳あって、推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
ソロ活婚はじめました
八月三日。雲ひとつない晴天に恵まれた佳き日。
厳かな明治神宮の奉賽殿で執り行われた神前式で、互いの親族に見守られるなか三三九度を酌み交わした杏璃と央輔は正式な夫婦となった。
最も格式高いとされている五つ紋の入った紋付羽織袴に身を包んだ央輔は、目を見張るばかりに煌めいていた。後光でも放っているのかと思うほどだった。流石は、推しと瓜二つの美貌。和装も素晴らしく似合っていて、周囲の視線を虜にしていた。
隣で純白の綿帽子に白無垢という花嫁姿の杏璃は、央輔の凜々しく艶やかな姿に終始見蕩れてしまい、挙式どころではなかったほどだ。
そんな杏璃のことを央輔は意外にも優しく気遣い、さり気なくリードしてくれていた。おかげで、神前式も明治記念館での披露宴も滞りなく進められた。
披露宴では、母が一生に一度のことだからと、自らデザインし仕立ててくれたウエディングドレスに身を包み、祝福の言葉まで贈ってもらった。本物の花嫁にでもなったかのような錯覚に陥りそうにもなった。
実際には、利害一致のソロ活婚であるので、不安だって拭えないままだし、祝福してくれた互いの親族をはじめ職場の同僚や友人らに対して罪悪感を覚え心苦しくもあった。
だが、推しと同じ麗しい央輔のご尊顔をこれから毎日飽きることなく、しかも一生涯眺められるのだから、杏璃にとっては幸せなことに変わりない。
央輔との見合いを提案してくれた晴子と洋輔はもちろん、駆けつけてくれ母をはじめ、伯父夫婦、二人の従兄、央輔の親族、祝福の言葉を贈ってくれたすべての人に心からの感謝を告げられた。こうして夫婦となった二人は、この日の内に新婚旅行の目的地であるドバイへと旅だったのだった。
翌日の早朝、ドバイへと降り立った杏璃と央輔は、タクシーでドバイでも屈指の五つ星ホテルへと向かった。
あたかもアラビアの宮殿かと見紛うほどの豪奢で立派なホテルの佇まいに、杏璃は呆気にとられっぱなしだった。
が、しかし、結婚式や慣れない飛行機での長旅に疲れていたのだろう。杏璃は部屋につくなり熟睡してしまうのだった。気づいた時には日が傾きかけていて、慌てて起き上がった杏璃は、頭を抱えたくなった。
(……ウソ! もう夕方? せっかくのドバイが……)
「ふっ、そんなに落胆しなくても、八月のドバイは日中平均気温・四十度超えが普通なんだぞ。夜の街とも言われるドバイを満喫するなら、この時間からがもってこいだ。ほら、行くぞ」
「あっ、ちょっと、手なんか繋がなくても平気ですってばぁ……!」
「迷子になったら困るだろ」
「……もう、子ども扱いして」
などと文句を言いながらも、央輔の大きな手にしっかり握られているとそれだけで安心できて、心地も良く、杏璃は振りほどけない。
それを――
初めて訪れた異国の地だし、迷子になって迷惑をかけちゃいけないから、やむを得ない。
などと、杏璃は心の裡でそんな言い訳を何度も繰り返していた。