訳あって、推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
微かに残っていた余裕を根こそぎ奪い去るかのような、央輔の巧みな愛撫に翻弄され息も絶え絶えだ。
これまで恋愛経験のなかった杏璃にも、男女の情交についての知識ぐらいはある。
だが、それは保健体育の授業で習った知識でしかない。
推しのコミックスにもアニメにも初夜のシーンが描かれているが、年齢制限はないので朝チュン止まりである。
なので、こんなにも生々しいものだとは思いもしなかったし、これほどの快感を得るなんて、夢にも思わなかった。
経験がないためよくわからないが、もしかすると央輔の手技が巧みだからなのかもしれない。
恋愛感情が持てなくても、これだけ麗しい容貌なのだから、女性にもさぞかしモテるに違いない。
おまけに、美容外科医な上に、あの鷹村グループの御曹司という、立派な肩書きまであるのだから。女性にモテないはずがない。
この様子からして、こういう男女の情交にも、詳しいようだし。きっとこういう経験も数え切れないほどあるのだろう。
ネットで得た知識によると、他者に恋愛感情を抱けないアロマンティックの人にも、性欲はあるみたいだし。
そこまで思い至った杏璃は、なぜか奇妙な胸の痛みに襲われた。どういうわけかモヤモヤした感情まで増幅していく。
(なんだろう。この胸の痛みとモヤモヤは……)
羞恥も忘れ自身の不可思議な反応に困惑している杏璃の意識に、央輔の低い声音が割り込んでくる。
「こんな時に考え事か?」
心なしか不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか。
ふとそんな考えが頭を過った杏璃だったが、自身の置かれた状況を思い出し、それどころではなくなってしまう。
とんでもない羞恥に全身を真っ赤に染め上げ、なんとか逃れようと小さな身を捩る。だが、央輔に固定された身体は動かない。
だというのに、央輔は『逃がさない』というように、尚も杏璃の脚をぐっと引き寄せ意味深な台詞を投下した。
「だったら、杏璃が集中できるように可愛がってやらないとな」
(……か、可愛がるって、何をどうやって……?)
不穏な雰囲気を感じつつも、杏璃には意味など理解できない。央輔は、頭の中で呟いた杏璃の疑問に答えるかのようにして、意地悪な声音で意味深長な言葉を重ねてくる。
「ここから涎を垂らして『満たして欲しい』と、言えるようになるまで」
相変わらず不穏な空気を孕んではいるが、比喩ばかりで意図など掴めない。けれど、これ見よがしに閉じていた脚を広げられてしまっては、嫌でも察しがついた。