訳あって、推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
嘘偽りのない本当の気持ち
「杏璃、寝惚けてるのか?」
央輔は杏璃をふわりと包み込むように抱き留めてくれた。その優しい声音がぬくもりと一緒に伝わってくる。
耳に心地よくて、とっても甘やかで、あたたかくて、なにより安心できる。
央輔の声に導かれるように顔を上げた杏璃はドキリとした。
これまで見た中で一番かと思うほどの蕩けた眼差しで杏璃を見つめていたからだ。
「寝惚けた杏璃も可愛いな。いつまでも見ていられそうだ。もうずっと寝惚けていてくれてもいいぞ。そしたら、ずっと杏璃を独り占めできる」
それだけで胸がざわめいて苦しいぐらいである。だというのに、央輔は砂糖菓子のように甘い言葉まで紡ぎ出した。トドメとばかりに、独占欲まで滲ませて。
(あれ? でも、もうそういうのはやめにするんじゃ……)
おかげで寝起きだった杏璃の頭が正常に機能しはじめる。だがそれは頭の中だけに留まらず、心の声はだだ漏れだったようだ。けれど杏璃にその自覚などなかった。
「ああ、だから思ったままのことを言っている」
それゆえに、央輔からの返答にも無意識に反応してしまう。
「え? それって⁉」
ただし、しつこいようだが杏璃自身はまるで気づいていない。それよりも自分と央輔が同じ気持ちでいるかもしれない、と思い至り驚きを隠せない。
無理もないだろう。央輔は他者に恋愛感情を抱けないアロマンティックなのだから。
が、しかし、元推しに背中を押してもらい、当たって砕ける覚悟を決めた杏璃に迷いはなかった。
――だったら、それも含めて央輔に確認すればいい。
「あの、もしかして、央輔さんも私のこと――」
そう考え行動に移しかけた杏璃に、なにやら慌てた様子の央輔がストップをかけてくる。
「……ちょ、ちょっと待て!」
杏璃はそれにも構わず想いのままを口にする。つもりが――。
「待ちません! だって私、央輔さんのことが――むぐっ」
央輔に尚もむぎゅっと胸に顔を強く押しつけるようにして掻き抱かれて、杏璃は声を紡げない。
「そういうことか。だから杏璃は……。なのに俺は……くそっ……」
むぎゅぎゅっと胸に抱き寄せた杏璃の頭を包み込んだ央輔は、なにやらぶつくさと独り言ちている。
ときに納得したように、ときに嘆くようにして。
理由はよくわからないが、どうやら央輔は一人反省会?を繰り広げているようだ。だが、このままでは埒があかないし、息も苦しくなってきた。堪りかねた杏璃は央輔の胸を押しやりガバッと顔を上げる。
「央輔さん、苦しいです!」
するとハッとした央輔が即座に謝ってきた。
「悪い。自分のあまりの不甲斐なさに呆れて……」
央輔はいつになくシュンとしていて、声にも覇気がない。酷く打ちひしがれているように見える。
推しである央輔をこんな風にさせているのが自分だと考えただけで、胸にくるものがある。杏璃は、不謹慎にも胸をぎゅぎゅんとときめかせてしまっている。そこに、央輔から意外な言葉が放たれた。
「……もう終わったことだ。今さら、嘆いても仕方ないよな」
誰に向けるでもなく発せられた言葉は、央輔自身に言い聞かせているようだった。
その証拠に、央輔は言い終えると同時、思い切るようにして大きく息を吐くと居住まいを正して杏璃に向き合ってくる。
そうして、真剣な眼差しで見つめつつ、見合いの日、杏璃を客室で介抱している際に、それまで誰にも芽生えなかった不可解な感情を杏璃に抱いたこと。杏璃に会うたびにその感情が増していったこと。それでも自分はアロマンティックだと思い込んでいた央輔は、そんなわけがないと自身に幾度も言い聞かせていたこと。杏璃と初夜を過ごしたことで、その感情が人を愛することだと思い知ったこと、それらを明かしてくれた。
「杏璃のことを想うと、胸が張り裂けそうになるほど苦しくて堪らない。こんなにも胸が苦しいほど愛おしいと想えるのも杏璃だけだ。一人で過ごす方が気楽でいいと思っていたはずなのに……。杏璃が傍にいないと、何だか物足りなくて楽しくないし、なにより、心が落ち着かない。こんなこと初めてで、自分でもどうすればいいかわからない。それぐらい杏璃のことが好きだ、愛してる。 ……それなのに、俺は杏璃に誤解させたまま、気持ちに気づいてやることもできなかった」
最後の言葉で、さっきの一人反省会が、何だったかもハッキリした。
そのすべてが――央輔が杏璃を想う気持ちに繋がっていたのだと知ることもできた。
もうこの時点で、杏璃は感極まって今にも泣きだしてしまいそうだ。
だというのに、すべてを語り終えた央輔は改まった様子で杏璃の両手を引き寄せる。そして宝物のように大きな手に包み込むと、誓いまで立ててきた。
「けどこれからは、愛する杏璃に相応しい夫になれるよう誠心誠意努めると誓う。だから、これからは嘘偽りのない妻として、一生俺の傍にいて欲しい」
誓いに続いて紡ぎ出された、あたかも、プロポーズのような央輔からの言葉に、とうとう杏璃の涙は堰を切ったようにポロポロと溢れ出す。
――まさかこんな日がくるなんて、夢みたい……。
思わず心の中で呟いていた。だが、確かに目の前には央輔がいて、手からは央輔の体温だけでなく、切実な想いまでもが伝わってくる。
杏璃は流れる涙もそのままにコクコクと何度も頷きながら「はい」そう言って央輔の胸にぎゅっと抱きついた。
「杏璃、ありがとう。一生大事にする」
ホッと安堵の息をついた央輔は、杏璃の身体を大切な宝物でも扱うようにふわりと優しく、けれど力強くしっかりと包み込んでくれる。噛みしめるようにして紡ぎ出した自身の言葉を体現するかのように――。
央輔の言動のひとつひとつに心を打たれてしまった杏璃の涙は、収まるどころかどんどん勢いを増してゆく。
杏璃は心から結ばれた央輔のあたたかな胸に顔を埋めたまま、小さな子どものように泣きじゃくる。
感極まって泣き続ける杏璃の気持ちが落ち着くまでの間、央輔は杏璃の背中を絶えず優しく撫でてくれていた。
央輔は杏璃をふわりと包み込むように抱き留めてくれた。その優しい声音がぬくもりと一緒に伝わってくる。
耳に心地よくて、とっても甘やかで、あたたかくて、なにより安心できる。
央輔の声に導かれるように顔を上げた杏璃はドキリとした。
これまで見た中で一番かと思うほどの蕩けた眼差しで杏璃を見つめていたからだ。
「寝惚けた杏璃も可愛いな。いつまでも見ていられそうだ。もうずっと寝惚けていてくれてもいいぞ。そしたら、ずっと杏璃を独り占めできる」
それだけで胸がざわめいて苦しいぐらいである。だというのに、央輔は砂糖菓子のように甘い言葉まで紡ぎ出した。トドメとばかりに、独占欲まで滲ませて。
(あれ? でも、もうそういうのはやめにするんじゃ……)
おかげで寝起きだった杏璃の頭が正常に機能しはじめる。だがそれは頭の中だけに留まらず、心の声はだだ漏れだったようだ。けれど杏璃にその自覚などなかった。
「ああ、だから思ったままのことを言っている」
それゆえに、央輔からの返答にも無意識に反応してしまう。
「え? それって⁉」
ただし、しつこいようだが杏璃自身はまるで気づいていない。それよりも自分と央輔が同じ気持ちでいるかもしれない、と思い至り驚きを隠せない。
無理もないだろう。央輔は他者に恋愛感情を抱けないアロマンティックなのだから。
が、しかし、元推しに背中を押してもらい、当たって砕ける覚悟を決めた杏璃に迷いはなかった。
――だったら、それも含めて央輔に確認すればいい。
「あの、もしかして、央輔さんも私のこと――」
そう考え行動に移しかけた杏璃に、なにやら慌てた様子の央輔がストップをかけてくる。
「……ちょ、ちょっと待て!」
杏璃はそれにも構わず想いのままを口にする。つもりが――。
「待ちません! だって私、央輔さんのことが――むぐっ」
央輔に尚もむぎゅっと胸に顔を強く押しつけるようにして掻き抱かれて、杏璃は声を紡げない。
「そういうことか。だから杏璃は……。なのに俺は……くそっ……」
むぎゅぎゅっと胸に抱き寄せた杏璃の頭を包み込んだ央輔は、なにやらぶつくさと独り言ちている。
ときに納得したように、ときに嘆くようにして。
理由はよくわからないが、どうやら央輔は一人反省会?を繰り広げているようだ。だが、このままでは埒があかないし、息も苦しくなってきた。堪りかねた杏璃は央輔の胸を押しやりガバッと顔を上げる。
「央輔さん、苦しいです!」
するとハッとした央輔が即座に謝ってきた。
「悪い。自分のあまりの不甲斐なさに呆れて……」
央輔はいつになくシュンとしていて、声にも覇気がない。酷く打ちひしがれているように見える。
推しである央輔をこんな風にさせているのが自分だと考えただけで、胸にくるものがある。杏璃は、不謹慎にも胸をぎゅぎゅんとときめかせてしまっている。そこに、央輔から意外な言葉が放たれた。
「……もう終わったことだ。今さら、嘆いても仕方ないよな」
誰に向けるでもなく発せられた言葉は、央輔自身に言い聞かせているようだった。
その証拠に、央輔は言い終えると同時、思い切るようにして大きく息を吐くと居住まいを正して杏璃に向き合ってくる。
そうして、真剣な眼差しで見つめつつ、見合いの日、杏璃を客室で介抱している際に、それまで誰にも芽生えなかった不可解な感情を杏璃に抱いたこと。杏璃に会うたびにその感情が増していったこと。それでも自分はアロマンティックだと思い込んでいた央輔は、そんなわけがないと自身に幾度も言い聞かせていたこと。杏璃と初夜を過ごしたことで、その感情が人を愛することだと思い知ったこと、それらを明かしてくれた。
「杏璃のことを想うと、胸が張り裂けそうになるほど苦しくて堪らない。こんなにも胸が苦しいほど愛おしいと想えるのも杏璃だけだ。一人で過ごす方が気楽でいいと思っていたはずなのに……。杏璃が傍にいないと、何だか物足りなくて楽しくないし、なにより、心が落ち着かない。こんなこと初めてで、自分でもどうすればいいかわからない。それぐらい杏璃のことが好きだ、愛してる。 ……それなのに、俺は杏璃に誤解させたまま、気持ちに気づいてやることもできなかった」
最後の言葉で、さっきの一人反省会が、何だったかもハッキリした。
そのすべてが――央輔が杏璃を想う気持ちに繋がっていたのだと知ることもできた。
もうこの時点で、杏璃は感極まって今にも泣きだしてしまいそうだ。
だというのに、すべてを語り終えた央輔は改まった様子で杏璃の両手を引き寄せる。そして宝物のように大きな手に包み込むと、誓いまで立ててきた。
「けどこれからは、愛する杏璃に相応しい夫になれるよう誠心誠意努めると誓う。だから、これからは嘘偽りのない妻として、一生俺の傍にいて欲しい」
誓いに続いて紡ぎ出された、あたかも、プロポーズのような央輔からの言葉に、とうとう杏璃の涙は堰を切ったようにポロポロと溢れ出す。
――まさかこんな日がくるなんて、夢みたい……。
思わず心の中で呟いていた。だが、確かに目の前には央輔がいて、手からは央輔の体温だけでなく、切実な想いまでもが伝わってくる。
杏璃は流れる涙もそのままにコクコクと何度も頷きながら「はい」そう言って央輔の胸にぎゅっと抱きついた。
「杏璃、ありがとう。一生大事にする」
ホッと安堵の息をついた央輔は、杏璃の身体を大切な宝物でも扱うようにふわりと優しく、けれど力強くしっかりと包み込んでくれる。噛みしめるようにして紡ぎ出した自身の言葉を体現するかのように――。
央輔の言動のひとつひとつに心を打たれてしまった杏璃の涙は、収まるどころかどんどん勢いを増してゆく。
杏璃は心から結ばれた央輔のあたたかな胸に顔を埋めたまま、小さな子どものように泣きじゃくる。
感極まって泣き続ける杏璃の気持ちが落ち着くまでの間、央輔は杏璃の背中を絶えず優しく撫でてくれていた。