訳あって、推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
 真新しいシステムキッチンで央輔と仲良く並んだ杏璃は、カットした野菜や小さくちぎったレタスをサラダボウルに盛り付けていく。央輔は出来上がったポーチドエッグを容器に移すと、今度は厚切りベーコンをソテーしている。熱したフライパンからジュワーッという音と共に食欲をそそる芳ばしい香りが立ちこめる。いい感じに焼き上がったベーコンとトーストを皿に盛り付け、最後にドリップ仕立てのコーヒーをカップに注いで準備完了。

 央輔こだわりの豆を自家焙煎したコーヒーの芳醇な芳香がたまらない。何より、すぐ隣に央輔の気配を感じているだけで、胸がポカポカあったかくなる。

「わぁ! メチャメチャ美味しそう! それにとってもいい匂い!」
「こんなことでいちいち感激してないで、食べるぞ」

「だって、想いが通じ合って、本当の夫婦になれた央輔さんと、こうして並んでキッチンに立ってるんだって思ったら、嬉しくてどうしようもなくって」
「そんな可愛いことばっかり言ってると、今すぐ寝室に連れ込むぞ」

「や、ヤダ! 央輔さんのエッチ!」
「ちょっと揶揄っただけで、そんな真っ赤になって、可愛い反応ばっかしてないで、ほら、食べるぞ」

「はーい!」

 央輔も何やかんや言いつつも、とても楽しそうにしている。それがどうにも嬉しくて、杏璃は感情を抑えられない。ふたりしてわいわいイチャつきつつ、ダイニングテーブルへと運んで、ふたり仲良く舌鼓を打った。その後もふたり仲良く後片付けもして、リビングのソファでのんびりゆったり過ごしていた。

 今日は、特に予定もなかったのでふたりきりの時間を存分に堪能するつもりでいたのだ。 

 ところがソファに腰を落ち着けた央輔の膝上で抱っこされ寛いでいた杏璃の部屋着の裾からするっと央輔の手が入り込んでくる。忍ばされた央輔の手は胸元へと這わされあっという間に下着をたくし上げ素肌が露わになった。

「あっ、ちょ……――ひゃぁ!」

 あまりの早業に驚く間もなく、杏璃の唇のあわいからあられもない声がまろび出た。そこにふたつの膨らみを下から持ち上げるように手を宛がった央輔の意地悪な声音が耳朶を打つ。

「嫌なら、やめようか?」
「……やめちゃやだ……」

 羞恥に苛まれつつも、央輔に求めてもらえるのが嬉しくて、杏璃は迷いなく答えていた。
 
 央輔が息を呑む気配がして、けれどすぐに、気を良くしたのか意地の悪い声で問い返してくる。

「なら、どうして欲しい?」
「もう、央輔さんの意地悪っ」

 これには少々ムッとして、思わず振り返って央輔を窺えば、嬉しそうに目尻を下げて口の端まで緩ませていた。

「どこが意地悪なんだ。言ってくれないとわからないんだから仕方ないだろう。ほら、どうなんだ?」

 嬉しそうな表情同様の嬉々とした声音で再び問い掛けてくる。いつになく嬉しそうな推しの様子に、杏璃まで嬉しい心持ちになってくる。推しに感化させられた杏璃は、羞恥を堪えつつ素直な言葉を紡ぎ出す。

「央輔さんに、もっともっと触って欲しい」
「どこを?」

 さすがに、言葉にするのはどうにも躊躇われた。しかし、推しが望んでくれるのなら何だって叶えてあげたい。

 そんな想いから、杏璃は羞恥に塗れつつも、央輔の手を取り胸もとへと宛がって示した。

 ちょうどその時、杏璃のスマホがブルブルと震えだした。あたかもふたりの邪魔でもするかのような絶妙なタイミングで。

 (――こ、こんな時に誰? っていうか、こんな状態で出られないから……!)

 驚きと羞恥とで杏璃は大袈裟なぐらいビクッと肩を跳ね上げた。露わになった胸までがぷるんと波打ち恥ずかしくてどうしようもない。
< 51 / 69 >

この作品をシェア

pagetop