一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
 私が躊躇していると
「行きましょう」
 彼に腕を優しく引かれた。

 今日は久しぶりに外出を楽しむのもありかも。

「はい」

 彼に誘導されるまま映画館に入り、恋愛ストーリーを鑑賞した。
 上映中は真宮さんを気にすることなく、作品に集中して感動して泣いちゃった。真宮さんはこういう話、苦手だったかな。エンドロールになって、チラッと真宮さんの顔を見た。
 すると「グスッ」彼もハンカチで目元を押さえていた。
 ええっ、泣いてる。
 元彼の新だったら<現実味がなくてつまらない>なんて言いそうだなって思ったのに。
 あれ、真宮さん。涙を拭くためにメガネを上にずらしているけど、こんなに目が大きいんだ。綺麗な目元。それによく近くで見ると、肌キレイ。
 彼を見つめていると
「すみません。泣いてしまいました」
 真宮さんはまだハンカチで目元を押さえている。

「真宮さん。映画、楽しかったですか?」

「はい、久しぶりに映画鑑賞をしました。感情移入してしまって、俺、小春さんより泣いていたかも。すみません」

 あんなに泣いてくれるなんて思わなかった。
 私が見たかった映画だったから好みが心配だったけれど、彼の様子を見て安心する。
 映画館を出ると、辺りは少し暗くなっていた。もう夕方なんだ。映画を見ていたからっていうのもあるけれど、楽しい時間ってすぐ過ぎちゃうんだよな。

「私も楽しかったです。付き合ってくれてありがとうございました」

 すっきりとした気分。真宮さんだからか、肩に力が入ることもない。気が楽で、本当に友達と遊んでるみたい。

 映画館近くのゲームセンターを通りすぎようとした時
「あっ」
 真宮さんが声を出した。

「どうしたんですか?」

「すみません。小春さん、ゲームセンターに寄ってもいいですか?」

「はい」

 何か欲しい物でもあるのかな。

「俺、好きなゲームがあって。最近復刻版が出て、また人気が再燃して。キャラクターがぬいぐるみになったみたいで。挑戦しても良いですか?」

 ある一台のUFOキャッチャーを真宮さんは指差した。

「はい。良いですよ」

 プレイしたことはないけれど、私もそのゲームの名前、聞いたことがある。 
 真宮さんは、百円を入れ、ゲーム機を操作し始めた。
 そういえばUFOキャッチャーは学生の頃、よくやったな。社会人になってから全然やらなくなった。
 ぼんやりとそんなことを思い出していると、ぬいぐるみは持ち上がりもせず、ゲームは終了してしまった。

「もう一回やっても良いですか?」

 真宮さんが真剣な顔をしている。

「はい。どうぞ」

 もう一回チャレンジするが、少しだけ持ち上がっただけでぬいぐるみは落ちない。

 真宮さんは
「諦めます」
 苦笑いを浮かべている。

「ちょっと待ってください」

 私は自分のお財布から硬貨を取り出す。

「小春さん?」

「この台、アームが弱いから持ち上げることを考えないで、転がした方が良いかも。それか、タグにひっかけるか。たぶん、百円じゃ取れないです」

 久しぶりの感覚。鈍ってないといいんだけど。
 私はボタンを押しアームを動かし、少しずつぬいぐるみを動かした。
 百円じゃ無理だけど、数回やったら取れそう。

「よしっ!」

 三回目にはぬいぐるみが落ち、取り出し口に落ちてきた。
 
 私はぬいぐるみを取り出し
「あげます」
 真宮さんに渡した。

 懐かしい達成感だ。

 あ、そうだ。学生の時にこんな風に取っていたら、当時の彼氏に<お前、それ、彼氏に取ってもらって嬉しいってやるやつだろ?男を立てろよ>なんて言われた気がする。

 こういうところが可愛げないのかな。
 やばい、真宮さんに引かれたかも。

 一瞬身体が固まってしまったが
「ありがとうございます!小春さん、上手なんですね!すごい」
 真宮さんは笑顔でぬいぐるみを受け取ってくれた。

 なんだか可愛い、喜んでもらえたみたい。
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