一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
 詩音さんとはまたすぐ会えると思っていたけれど、彼の仕事の都合で会えない日々が続いている。
 だけど、メッセージには返事をしてくれるし<懇親会には必ず迎えに行きますから>電話でのやり取りもしている。

 副社長だもんね、忙しいよ。
 そう自分に言い聞かせてはいたが、付き合ってからまだ時間が経っていないから、詩音さんのペースがつかめず、怖い。
 もしかしてもう飽きられたとか。お試しで付き合ったらどうでもよくなっちゃったとか。そんなマイナスなことまで浮かんでしまう。

「小春ちゃん、楽しみにしているね。新しい彼氏!」

 なんて社内ではネタにされているから、ストレスだ。
 
 詩音さんと会えないまま、会社の報告会とは名ばかりの懇親会の日を迎えた。
 社長や上司の挨拶からはじまり、運ばれてくる料理を食べながら会話をする。みんなフォーマルな服装で堅苦しい雰囲気ではあるけれど、お酒が入っているためか、いつもより話が弾んでいた。
 かという私は、料理を食べながら同じ部署の先輩と取り留めのない会話をし、たまに絡んでくる上司には愛想笑いで誤魔化し対応をしている。
 優秀な実績を残した社員が表彰されるが、私の名前は呼ばれることはない。
 
 代わりに元彼の新が呼ばれていて、壇上の上で挨拶をしていた。

「みなさん。ありがとうございます。これも日々、ご尽力してくださる先輩や支えてくれる仲間のおかげです」

 新は外面が良いから社内では信頼されているだろう。
 私の前では何もしない、できない彼氏だったけれど。付き合った当初は引っ張っていってくれて、デートプランも立ててくれた。優しかったな。
 同棲して半年後くらいから態度が変わった気がする。あの時から、瑠璃さんからアプローチを受けていたんじゃないかと思う。瑠璃さんはキレイでスタイルも良いから。慣れてきて小言を言う私なんかより、よっぽど魅力的に感じたのかも。
 新の挨拶が終わると
「結婚おめでとう!」
 酔った上司が大きな声で叫んだ。

 新は
「ありがとうございます」
 ハハっと笑いながら頭を下げ、壇上から下りる。

 席に戻っても肩とか叩かれているし、それを見つめる瑠璃さんも幸せそう。 
 素直に二人を祝福できたらいいのに。
 会も終わりに近づいたためスマホを確認するも、詩音さんからは返信が来ていなかった。
 もう終わる時間なのに。やっぱり今日も仕事で抜けられないのかな。
 終わった瞬間、斎藤先輩とかは何か言ってくるんだろう、イヤだな。
 そんなことを考えていると閉会の挨拶が終わっていた。
 みんな席を立ち
「二次会でも行く?」
 なんて話をしている。

 私もその場で待っているわけにもいかず、詩音さんが来るのを諦めて席を立った時だった。

「あれ、噂の彼氏、来てないじゃん」

 斎藤先輩がこの前の飲み会の時のメンバーを連れている。
 それにうしろには腕組みをしている瑠璃さんまで立っていた。

「良い人いるんじゃなかったの?やっぱりウソだったのね。私に新さんを盗られたって根に持ってるの?それは小春ちゃんに魅力がないからじゃない。だから新さんは私を選んでくれたの」

 どうしてこんなことで取り囲まれなきゃいけないの。
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