一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
「はぁ……。詩音さんっ、ちょっと、待って……」

 一度唇が離れたタイミングでキスをされないよう下を向く。

「すみません。小春さんに触れたくてずっと我慢してたんです」

「わかりました。だけどここじゃ……。イヤです。部屋に入りましょう。今日はずっと一緒に居られるんですから」

「はい」

 彼は小さく返事をした。

 リビングへ行くと
「小春さん。荷物は寝室にスペースを空けておいたので、そこに置いてください。ご飯は食べたんですよね?」

「ありがとうございます。ご飯は、さっき食べました」
 いつもの詩音さんに戻ったみたい。

 食事は懇親会で食べたし、詩音さんも取引先と会食してきたって言ってたな。

「今、お茶淹れますね。さっきはすみません。二人きりになったらすごく嬉しくなって」

 詩音さんでもあんな風になることがあるんだ。

「何か手伝いますよ」

 私も荷物を置いたあと、慌ててキッチンへ向かう。
 大きな冷蔵庫、最新のやつだ。羨ましい。
 冷蔵庫を見ていると
「珍しいですか?特に冷蔵庫の中は変わったものは入ってないですよ」
 不思議そうに詩音さんにたずねられた。

「いえ。料理をする男性と付き合ったことがないから新鮮で。こうやって一緒にお茶の準備できるのとか、楽しいです」

「それは良かった」

 詩音さんは私をうしろから抱きしめた。

「ドキドキします」

 密着されるとまだ恥ずかしい。私、詩音さんとよく初日でエッチできたな。お酒、ほどほどにしないと。
 お茶を飲みながら、お互いのことについて話をした。

「えっ、詩音さんってお姉さんがいるんですか?」

「はい。今は家を出て全く違う業種で働いています。たまに帰ってくることがあって。一度結婚して、離婚してるんです。離婚の原因は、性格の不一致って言ってましたけど」

 詩音さんのお姉さんなんだから、綺麗な人で、性格も優しい人なんだろうな。会ったことはないけど、想像できる気がする。
 私の家族についても詩音さんは聞いてくれて
「弟がいるんです。気弱な子で。昔から自分がしっかりしなきゃって。だからこんな性格になったのかもしれません」

「小春さんがお姉さんなら、頼りになりますね。ちゃんと怒ってくれそうです」

「あ、それ。私が気が強いって言ってますか?」

 無理矢理作ったわけではないが、頬をプクっと膨らませて見せた。

「ハハッ。そういう意味じゃないです」

 笑っている詩音さんと、その時、しっかり目が合った。
 あ、ヤバい。キスしたいかも。
 私は詩音さんの肩に両手を伸ばし、チュッとキスをした。

「ごめんなさいっ、私……」

 プイっと外を向くと
「可愛すぎます」
 彼は、私をソファの上に押し倒し
「んんっ」
 舌を絡める濃厚なキスをしてきた。

「はぁっ……」

 唇が湿り、リップ音が部屋に響く。
 優しいけれどどこか強引で、もしかしたら詩音さんって独占欲が強いのかも。
 そんなことをうっすら感じてしまった。
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