一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています

不本意な飲み会

「はい」

 仕事の補助?残業を変わってほしいとか?
 普段関りが少ない女性の先輩なのに。なんだろう。

「今度、飲み会があるの!飲み会っていうか、合コンに近いかな。HOPE製薬会社の社員さんが相手なんだけど、急遽人数が少なくなっちゃって。小春ちゃん、参加してくれないかな?」

 HOPE製薬会社ってうちのコールセンターが請け負っている大手製薬会社じゃん。
 そんなところの飲み会、ううん、合コンなんて気が引けるよ。

「すみません。私、合コンとか苦手で」

 別れたばかりだから、今は恋愛って気分でもない。男性やその場の雰囲気に合わせられるほど、明るく振舞える自信がないな。そんな子がいたら、雰囲気が悪くなるだけだ。

「いいの。本当に人数合わせだから。相手に失礼がないように人数を合わせたいだけなの」
 
 正直に言われたが、それもそれでなんだかな。ていうか、先輩。私が別れたって知ってるの?私は誰にも言ってないのに。
 新が別れたって誰かに話をして、車内で広まっているんだ。

 うーんと悩んでいると
「お願い!数時間で終わるから」
 まだこの会社を辞めるわけにはいかないし、ここは付き合いも大切なのかな。簡単に断わって、居づらい職場環境になるのも嫌だ。

「わかりました。行きます」

 返事をすると
「ありがとう!詳細は今度連絡するね」
 パッと顔が明るくなり、先輩は自席へ戻っていく。

 憂鬱な気分になった。
 人数合わせの合コンか、いろいろと気が重い。先輩たちが狙っている人に好意を見せちゃダメだめとか。気をつけなきゃ。

 次の金曜日、私は仕事を終えて直接先輩に教えてもらった個室居酒屋へ向かった。

 案内された席に着くと
「お疲れ様!」
 斎藤先輩が声をかけてくれた。

 まだ男性陣はきていないようだ。
 私を含めた女性四人が揃ったみたいで
「私、HOPE製薬会社の藤本さん狙いなの!だから譲ってね」
 私を誘った斎藤先輩がみんなにお願いと手を合わせている。

 藤本さんとは誰だろう。
 先輩たちはHOPE製薬会社の社員さんと知り合いなのかな。じゃなきゃ、こんな飲み会開けないよね。

「えっ!藤本さんなんだ。私は望月さんです。協力お願いします」

 同じ会社でも話したことがない山本さんが口を開く。
 みんな、狙っている相手がいるのか。邪魔しないようにしないと。
 ていうか、みんなかなり気合入ってる。お化粧とか、服装とか、髪型とか。
 仕事終わりなのに、どうやって準備してきたんだろう。
 私なんていつも通りジャケットだし、お化粧は直してきたけれど。浮いている気がする。
 まぁ、それでいいのか。目立たない方がいいよね。

 女性社員同士の会話にあまり入ることができず、しばらく時間が過ぎた。

 すると
「お疲れ様です!」
 明るい声とともにHOPE製薬会社の男性陣が部屋に入ってきた。

 仕事ができそうって感じの人たちだ。あれ、向こうは三人なのかな。

「ごめん。一人、新人が遅れてくるってさっき連絡があって。仕事でミスしたらしくてさ。先に始めて良いって」

 斎藤さんが狙っている藤本さんという人が向こうは仕切っているらしい。

 新人さんか。新入社員なのかな。
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