一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
 目を開けると、フカフカのベッドの上だった。
 ここは詩音さんのベッドの上。となりを見ると彼が寝ている。
 綺麗な寝顔だ。小顔なのに、どこか凛々しい。
 サラっと髪の毛を思わず撫でてしまうと、その手をギュッと掴まれた。

「っ、起きていたんですか?」

 てっきり寝てるかと思ったのに。

「さっきまで寝てました。小春さんが触れてくれて、それで起きました」

 触らない方が良かった。もっと寝てもらってた方が平和だったかも。
 
 後悔をしていると
「さっきの約束、覚えてますか?」
 詩音さんに訊ねられた。

 さっきの約束、覚えている。

「はい。ずっと一緒です」

 お試しなんかじゃなく、本当の彼女になりたい。
 私の返答に彼は、フッと微笑んでくれた。

「小春さんのことを愛しすぎて。きちんとした告白は、またあとでします」

「はい」

 正式に付き合ってくださいという彼の言葉を疑いもなく、私は待つことにした。

 次の日、朝から詩音さんに抱かれ、気づくと夕方になっていた。

 詩音さんに「出かけましょう」と誘われ、車で海浜公園に来ている。

 夜景が綺麗。海辺を詩音さんと手を繋いでゆっくりと歩く。
 こうやって二人でデートしたの、久しぶりかも。いや、付き合ってからは時間がなくてなかったかもしれない。

 風がふわっと吹き、髪が揺れる。
 詩音さんの髪の毛をかきあげる仕草に、思わずかっこ良いと感じてしまう。  
 こんな素敵な人が私の彼氏なんだ。信じられない。

 詩音さんはピタッと歩くのを止め、私の手を離した。

 どうしたんだろうと思っていると
「小春さん。俺はもうあなたなしじゃ生きていけません。幸せにします。結婚してください」
 少し赤みを差している顔で恥ずかしそうに告白してくれた。

 えええええっ?結婚!?
 正式に付き合ってくださいじゃなくて?

 私が結婚という二文字に戸惑っていると
「昨日、約束してくれましたよね?ベッドの中で」
 彼は不意に私を抱きしめた。

 ベッドの中?
 そうだ、あの時。最初の方が聞き取れなかったけど、結婚って言ってくれてたの?

 私が返答しないでいると
「俺じゃダメですか?」
 詩音さんが不安そうな声で呟いた。

「いえ。あの。逆に私で良いのかなって。詩音さんみたいなすごい人と結婚して良いのかなって」

 彼みたいな人と結婚していいの?
 言ってみれば、彼は御曹司だ。なのに、私みたいな普通の人間がいいのかな。

「俺は小春さんが良いんです。小春さんが立場を気にするんなら、俺は会社を継がなくてもいい」

 詩音さん、そんな気持ちでいてくれたんだ。
 そうだよね。私が逆の立場だったら同じことを言うかもしれない。
 立場とか関係なく、自分を見てほしいって。

「もう一度言います。俺と結婚してください」

 ギュッと私を抱きしめる彼の力が強くなった。

「はい」

 私も背伸びをして、彼を抱きしめ返す。

 困難も試練も、詩音さんとなら乗り越えていける。
 きっと大丈夫だ。
 私の返事に
「一生、愛します」
 そう言って彼は、ジュエリーボックスをポケットから取り出した。
 パカッと空けてくれ
「これは婚約指輪です。結婚指輪は二人で選びに行きましょう」
 私の指にリングをはめてくれた。

 左の薬指にはめられた指輪、大きな一つのダイヤが輝いている。

「綺麗」

 思わず呟くと
「小春さんの方が綺麗ですよ」
 彼はチュッと私の頬にキスをしてくれた。
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