一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
 私の行動に周りの目が点になっている。

「ちょっと、小春ちゃん?」

 私を誘ってくれた斎藤先輩がどうしたの?と慌てているが
「すみません。あまりにも不愉快なので帰ります」
 本音が出てしまった。

 真宮さんも目をパチパチさせていたが
「行きましょう?」
 私が再度誘うと、コクンと頷き席を立ってくれた。

「ええっ!ちょっと!そんなに怒ること?」

 藤本さんが冗談じゃんと言っているのが聞こえたが、私は真宮さんを連れて、個室を退席した。

「真宮さん、私のジャケット使ってください。明るいところでは濡れているところ、目立っちゃうかもです。どこかで代わりの洋服、買いましょう」

 はいっと私のジャケットを彼に押し付けた。

「それじゃあ、田澤さんのジャケットが汚れてしまいます」

「大丈夫です。安物ですから。ちょうど買い替えようと思っていたので」

「……。すみません。ありがとうございます」

 私たちは近くのディスカウントストアにより、代わりの洋服となる物を買い、真宮さんには着替えてもらった。

「すみません。私、真宮さんの今後とかを考えず、連れてきてしまいました。あまりにもイライラしちゃって。迷惑でしたか?」

 ここまで彼を連れ出しておいてもう遅いよね。
 あの場を見ていられなくて彼を誘っちゃったけど、真宮さんは藤本さんと今後も付き合っていかなきゃいけなかったのに。

 我慢していた方が彼にとっては良かったのかな。
 冷静になってみると、もっと穏便に済ませた方が良かったのかなと思う。

「いいえ。連れ出してくれて助かりました。ありがとうございます。田澤さん、かっこ良かったです。ヒーローみたいでした」

 フフっと彼が笑ってくれて安心した。

 かっこ良かったか。もっと女性らしくいた方がいいのかな。
 今思い出せば、別れる前、元彼の新にも<守ってあげたい>と思えなくなったって言われちゃったし、こういう気質を直した方がいいの?

 私が考え事をしていて返答しなかったからか
「すみません!カッコ良いとか、失礼でしたか?」
 オロオロと真宮さんはすみませんと何度も謝ってくれた。

「いえ!元彼にフラれた理由が可愛げがないとか、おしとやかな子が良いって言われたことを思い出して。やっぱりもっと女の子らしい子の方が良いのかなって」

 私、初対面の人になんてことを話してるんだろう。

「俺は田澤さんの優しくて強いところが素敵だと感じました」

 真宮さん、真剣に慰めてくれている。良い人だ。

「ありがとうございます」

 口角が自然と上がる。
 その時、真宮さんの瞳が大きくなり「はい」目元を細め、彼も微笑んでくれた。
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