一夜限りの関係のはずが、隠れ御曹司から執愛されています
 帰宅するため、真宮さんはタクシーを呼ぶからとアプリで配車を手配している。私はまだ終電があるから大丈夫だ。

「田澤さん、連絡先を交換してください。ジャケット、クリーニングをしてお返ししたいんです」

「えっ、いいですよ。クリーニングなんて」

 本当にそんなに高い物でもないし、最近買った物でもないのに。
 でも、私が逆の立場だったら同じことをするんだろうな。

「気にしないでくださいね」

 もう一度念を押し、真宮さんと連絡先を交換した。
 タクシーが一台、いや、二台、目の前に停まる。
「夜遅いし、女性一人で危ないのでタクシーで帰ってください。それに俺にジャケット貸してくれたから、風邪でも引いたら申し訳ないです」
 真宮さんから<さっきのお店で上着になるようなものを買います>って提案されたんだけど、そんなに寒くないし、断わったんだ。

「わかりました。お疲れさまでした。あの、会社で藤本さんに何かされたら相談してくださいね。私じゃ何もできないかもしれないけど」

 あの上司だ。きっと嫌味を言ってくるに違いない。話しだけなら聞くことができる。私が強引に連れて来てしまったから、真宮さん、怒られちゃうんだろうな。

「ありがとうございます」

 真宮さんはペコっと軽くお辞儀をし、私がタクシーに乗るのを見送ってくれた。絶対、仕事ができる人だと思うのに。私の勘違いかな。
 帰宅するタクシーの中、ふと窓の外を見ながら真宮さんのことを思い出す。
 
 アパート前に着き、タクシーが停まり
「ありがとうございました」
 タクシーの扉が開いた。

「あの、おいくらですか?」

「アプリに登録しているカードからの引き落としになります」

 そっか。真宮さんが呼んでくれたから彼が支払ってくれるんだ。

「わかりました。ありがとうございました」

 サッとタクシーを降り、自宅のドアを開ける。

「疲れた」

 気疲れした、ベッドに倒れ込みたい気持ちを抑え<お疲れ様です。今家に着きました。タクシー代、払ってもらってすみませんでした>真宮さんにメッセージを送る。

 するとすぐにピコンという通知音が鳴り<お疲れ様です。いえ、こちらこそありがとうございました。ゆっくり休んでください>真宮さんから返事がきた。

 スタンプで<おやすみなさい>と送る。

「シャワー浴びてこよう」

 今は何も考えたくない。こんなに飲み会って疲れたっけ。しばらくは断わろう。というか、斎藤先輩も怒ってるんだろうな。
 いや、斎藤先輩は藤本さん狙いだから、別にいいのか。
 休み明けの出勤が億劫に感じた。

 休日明け、出勤すると
「小春ちゃん!この間は勝手に帰っちゃって!最後、態度が悪かったから空気を直すの大変だったんだからね」
 出勤するなり、予想通りに斎藤先輩が声をかけてきた。
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