夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 そうこうしているうちに、みなとみらいのショッピングモールについた。地下駐車場に車を停めて、エレベーターで売り場まで向かった。
 三階のボタンを押すと、奥さんが首を傾げた。

「紳士服売り場じゃないの?」
「はい。その……渉さんはいつも決まったブランドのネクタイを使ってますし、こだわりがあるのかなって」

 選んだブランドが、万が一にも苦手なものだったりしたら、目も当てられない。

「だから、二人の共通趣味の物を贈ろうかなって」
「共通の趣味なんて、素敵ね。でも、三階って雑貨じゃない?」
「えっと、共通の趣味がお酒でして。ここならグラスもあるかなって。それに……」

 脳裏に砕かれたロックグラスとジンのボトルがよぎった。

 あの日以来、大好きだったジントニックが飲めなくなり、行きつけのバーにも行っていない。渉さんは、事件が解決すれば気持ちも晴れるだろうっていってくれるけど、本当にそうなのかって不安がどこかにある。
 だから、その不安やトラウマのようなものを、渉さんと幸せな思い出を作って上書きしたいって気持ちもあった。
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