夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 黙り込んだ私を不思議に思わなかったのだろうか。深く訊くようなことをせず、奥さんは「ペアグラスね」と呟いて少し首を傾げた。

「それだったら、赤レンガ倉庫の方があると思うわよ」
「赤レンガ……」

 なるほどと頷きながら、だけどこれ以上迷惑をかけられないという気持ちもあり、ここで見つかることを祈って店に向かった。

 店長にプレゼントはしないのかとか、お子さんにいつまでサンタさんのプレゼントをあげたのかとか、他愛もない話をしていたら目的の店にすぐ着いた。

 キッチン用品と雑貨のお店には、様々なグラスが並んでいた。
 つるりとした冷酒用のグラスに、摺りガラスでできたタンブラー、和柄で金箔がちりばめられたもの。あるにはあるが、私がイメージしていた、渉さんに似合いそうな洗練されたデザインのグラスは見当たらない。

 ここなら、なにかしらあると思ったのにな。
 棚を前にして納得できずに唸っていると「赤レンガに行ってみましょう」と奥さんがいった。

「……ご迷惑をかけますし、ここからマンションまでそんなに遠くないから、一人で」
「そんなことをしたら、主人に怒られるわ。それに、ウィンドーショッピングなんて久しぶりで、私も楽しいのよ」
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