夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 昔と変わらない朗らかな笑みを浮かべるお兄ちゃん──渉さんは、ひとまず座ろうといって私に席を勧めた。そうして、カウンターから出てきた真奈さんから救急箱を受け取る。

「百香ちゃんは、相変わらず正義感が強いようだな」

 懐かしむような言葉で、彼に恋をした日がまざまざと蘇る。
 小学生の時、いじめっ子に負けたくないといって公園で泣いたあの日、大人はわかってくれないといった私を優しい手が撫でてくれた。少し遠慮がちに、だけどとても優しかった。

 あの日と同じように、渉さんは遠慮がちに私の手首を持つと、手際よく消毒をしてくれた。

「すぐに百香ちゃんだって気付けなくて、ごめんな。その……綺麗になってたから」

 目を細めて笑う渉さんに、昔の面影が重なった。
 まさか「綺麗」なんていわれるとは思ってもいなかった。
 お世辞だってわかっていながらも、胸の奥がざわめいて、ズキズキと痛んでいた手首のことを忘れるくらい鼓動が胸を叩いている。

 だけど、私は優しい眼差しを受け止めきれずに目を逸らした。
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