夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 さあと促され、手に持っていたグラスを棚に戻してお礼をいいながら頭を下げれば、奥さんは「娘の幸せのためよ」と笑ってくれた。

 再び駐車場へ戻ることにした。
 クリスマス前とはいうこともあり、平日の夕方だっていうのにすれ違う人は多い。

 仕事帰りの社会人に学校帰りの学生、親子連れにカップル──皆、クリスマスプレゼントを買いに来ているのかな。ビルの外はイルミネーションで彩られて、もっと人が多いんだろうし、デートのカップルも多そうだな。

 すれ違う人たちの幸せそうな顔を見ながら、エレベーターの前に行き、その到着を待っていた。その時、私の背後に誰かが近づく気配がした。
 とんっと肩がぶつかり、すみませんといいながら振り返った瞬間、息が止まった。

「やあ、久しぶりだね。百香ちゃん」

 虚ろな目で笑った男は、私の腕をがっしりと掴んだ。
 恐怖に声が出ない。奥さんに助けを求めようにも、指一本動かなかった。

 早く、この手を振り解いて逃げ出さないと。どうしよう。どこに逃げたらいいの。
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