夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 背筋を冷たい汗が伝い落ちた。

「百香ちゃん、エレベーター来た……誰?」

 私の異変に気付いたのだろう。奥さんの声に緊張が滲んだ。

「あ、あっ……」
「──!? 百香ちゃんを放しなさい!」

 男がストーカーだと気付いたのだろう。奥さんはバッグを振り上げた。だけど、男はいとも簡単にそれを掴むと、奥さんを振り回すようにして突き飛ばした。瞬間、私の腕を掴んでいた男の手が緩んだ。

 とっさに突き飛ばし、駆け出すことができた。

「百香ちゃん、逃げて!」

 奥さんの声を振り返る余裕はなかった。
 人混みをかけわけ、後ろから迫る足音を振り切るようにエスカレーターを目指した。
 知らない人の悲鳴が聞こえる。だけど、そんなこと気になんてしてられない。

 今すぐ、外に出ないと。ここから、けやき通りまで走れば交番がある。そこまで、なんとしても逃げなきゃ。

 混みあうエスカレーターを、謝りながら駆け下りる。そうして、外へ通じる自動ドアを押し開けるように飛び出した時だった。
 再び手首が掴まれた。

「捕まえた。急に飛び出すからびっくりしたよ。そんなに、俺と二人でイルミネーションが見たかったの?」
< 112 / 132 >

この作品をシェア

pagetop