夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 痛むほどきつく握られた手首を引っ張られ、眩い光の中、引きずられるようにして歩かされた。
 横をすり抜けていく人たちが、声をひそめながらこっちを振り返る。だけど、誰一人として声をかけてくる者はいない。

「……放して」

 恐怖に震えながらやっと出した声は、雑踏に消された。

「お願い、放して……」
「また追いかけっこしたいの? 百香ちゃんって、意外と子どもっぽいとこあるね」
「ちがっ……私が、なにしたのよ……」
「なにか勘違いしてない?」

 歩道の途中で立ち止まった男は、にたりと笑って私を見た。

「俺はさ、頑張り屋の百香ちゃんを応援したいだけなんだよ」
「……応援?」
「そう。毎日たくさんのお客さんに笑顔を振りまいて偉いよね。俺さ、生意気な客とか許せないから、すぐ喧嘩腰になってさ。そんなんだから売り上げ伸びないんだって怒られるんだよ。だから、毎日笑顔な百香ちゃんが凄いって思っててさ」

 この男はなにをいっているのだろう。
 気味の悪い笑顔を浮かべながら、今までずっと私を見ていたという姿は、恐怖でしかない。
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