夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 さっきまでくっついていた身体が離され、温もりが遠ざかる。とたんに寂しさに体が揺れた。無意識のうちに渉さんのシャツを掴み、自分からその胸に飛び込む。

「離れないで。お願いだから、側にいて」
「大丈夫だ。一緒にいるから」
「そうじゃなくて……まだ、掴まれた手首に感触が残ってるの。忘れたいの」

 うっすらと残るうっ血痕は、バーの時とよく似ている。あの時ほど酷くはないけど、触れるとピリリと痛みが走る。その度に、あの男に思い出せといわれているようだった。

「……こんな日に手を出すのは、男としてどうかと思うんだが」
「今日じゃないと嫌なの。渉さん、お願い!」

 見上げた渉さんの顔が困惑に歪む。だけど、しばらくして諦めたようにため息をつくと、甘く「君って子は」と囁いた。

「俺は……百香が思っているほど優しい男じゃないよ」
「どんな渉さんでも好きだから」

 爪先立ちになり渉さんの首へと両手を回し、彼の体温を求めた。すると、身体がふわりと浮き上がった。

 パンプスを履いたまま横抱きにされ、部屋へと上がった渉さんにそのまま寝室まで連れていかれる。優しく降ろされ、パンプスが床に投げられた。
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