夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「そんなことないと思うけど」
「そんなことありますよ。何人の女の人に、こうして朝食作ってきたんですか?」

 言い終えてから、ちょっと意地悪かったかなと思いもしたけど、ちらりと見た渉さんの顔はちっとも怒っていなかった。それどころか、凄く幸せそうな顔で「妬いてくれるんだ」といい、私の唇をまた奪っていく。

「百香だけだよ」
「本当に?」
「ははっ、疑り深いな……百香を失って荒んでた俺の五年間なんて、なにも面白くはないよ」

 少し寂しそうに笑う顔に胸が痛んだ。
 渉さんは、子どもだった私のことをずっと忘れないで気にかけてくれていたんだ。そう思ったら、無性に愛おしさが込み上げ、嬉しさに頬が火照ってゆく。昨夜の情事を思い出したように、身体の奥まで疼きだした。

 過去の女に拘るなんて、バカらしい。今、渉さんはここにいるんだ。

「恋人は仕事だったっていっただろう?」
「それは覚えてるけど、昨夜のエッチだって凄く」

 思わず「気持ちよかった」といいかけてハッとなり、恥ずかしさが込み上げる。

「昨夜も、なんだって?」
「なんでもないです! 朝ご飯、食べましょう!!」

 スープマグに手を伸ばそうとしたら、その指が掴まれた。
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