夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 ハンカチを握りしめ、無意識にこくんと頷いていた。

 この誘いに他意はない。そうに決まってる。
 だって、渉さんは私と違う世界で生きているんだもの。きっと、同郷が懐かしいとか、田舎の話を聞きたいとか、そんな感じなんだろう。

「あ、あの!……渉さんは、実家に帰らないんですか? 渉さんの家って、法律事務所でしたよね」

 とっさに話題を変えると、渉さんは少し驚いたような顔をした。だけど、すぐ優しい笑顔に戻ってああと頷いた。

「実家に戻るつもりはないかな。ほら、俺と親父は反りが合わないだろう」
「……もしかして、ニューヨークにいったのは、お父さんと距離を取りたくて?」
「それだけじゃないけど、少しはあったかもな」

 困ったように目が細められ、踏み込みすぎたかなと後悔する。
 だけど、それならどうして日本に戻ってきたんだろう。
 四年もニューヨークにいたんだから、あっちに、恋人がいてもおかしくないよね。それとも、こっちに恋人がいて迎えに来たとかなのかな。

 私とは七歳差だし、結婚していてもおかしくないし──いろいろ考えたら、胸がいっそう重苦しくなった。
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