夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「……どうして日本に?」

 バーでは日本のご飯が恋しくてなんていってたけど、あれは冗談だよね。
 薄暗い車内で、緊張しながら渉さんの答えを待っていると、その口元から笑みが消えて真剣な眼差しが向けられた。

「百香ちゃんを口説きに帰ってきた」
「……え?」

 唐突な言葉に、思考回路が追い付かない。
 私たちの間を過ぎ、短い沈黙が眩しいヘッドライトと一緒に通りすぎていく。

 真面目な顔で冗談をまたいっているだけ、だよね?
 返す言葉を探して口を開きかけた時だった。渉さんの目が細められ、口角が緩む。

「て、いったらどうする?」
「……もう、驚かさないでください」
「ははっ。だって百香ちゃん、本当に美人になってるからさ」
「そうやって冗談ばっかりいって。そんなこといってたら、恋人さんが怒りますよ!」

 渉さんの笑い声にほっと息をついて、釣られるように笑うと「いないよ」と声がした。

「悲しいかな。仕事が恋人なんだよね」
「またそんな嘘いって。渉さんみたいに素敵な人を、女の人が放っておくわけ」

 ないでしょといい終わる前に、渉さんの顔が私の前に迫った。

「本当だよ。俺って一途だから」
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