夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 今思えば駅員さんに聞けばよかっただけなのに、窓口で乗客が並んでいる様子を見ただけで心が打ち砕かれてしまったんだよね。
 だから、駆け付けてくれた渉さんを見た時、我慢していた涙がこぼれて困らせてしまった。

 渉さんは大学見学までついて来てくれて、その帰りに横浜を案内してもらって──楽しい思い出を上乗せされていなかったら、思い出したくない本当の黒歴史になっていただろうな。

「その百香ちゃんが、横浜で店をオススメしてくれるんだもんな」
「引っ越して五年目ですからね」
「そうだね……俺が住んでいた時と色々変わっているんだろうな」

 懐かしむようで、どこか寂し気に目を細めた渉さんは、私の顔を見ると「なにか面白いものできた?」と尋ねた。

 面白いものか。
 再開発が進められて、駅もずいぶん綺麗になったし、みなとみらい地区も新しい商業施設ができたんだよね。

「マリンタワーと赤レンガがリニューアルされたし、新しい商業施設もいくつもできたんですよ。最近オープンしたティンバーワーフはまだ穴場かも」
「俺がいない間にデートスポットも変わった感じか」

 苦笑を見せる渉さんに、ドキッとした。
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