夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 突然、繋がれていた手に力が込められて、ぐんっと引っ張られた。
 足がもつれるようにして、気付けば渉さんの胸に寄りかかっていた。

「誰と行ったの?」
「……え?」
「女神橋の夜景、誰と見に行ったのかなって」

 私を見下ろす顔は笑っていない。真剣な眼差しを前にして、緊張が走った。

「えっと……大学の同期と」
「女の子?」
「そうですけど……?」

 私の返答に、渉さんはほっと肩の力を抜くと「よかった」と呟いた。そうして、何事もなかったような顔で歩き出す。
 今のって、嫉妬してくれたって勘違いしてもいいのかな。もしそうなら、凄く嬉しいんだけど。

 無言のまま車に乗ると、渉さんが私を呼んだ。

「百香ちゃん……今、彼氏はいないっていってたけど、本当?」
「本当です。そんな嘘つくようなことじゃないですよ」
「でも、凄く美人になったし、大学の時にモテてたんじゃないの?」
「私なんて美人の内に入らないですよ。それに、大学時代は目的もなくすごしてたし──」
 
 エンジンをかける渉さんの横顔を見て、大学時代は恋をすることから逃げていたんだと気付いた。
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