夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 無理やり、渉さんへの恋心ごと蓋をして閉じこもっていた。受験に失敗して、なにもかも捨てないといけない気分になっていたんだと。
 でも、十五年来の思いはそう軽くなかった。

 私の視線に気づいたのか、それとも、言葉を止めたことを不思議に思ったのか。振り返った渉さんは黙ったまま私を見つめている。

「恋の仕方も忘れちゃってたから」

 言葉がするりとこぼれ落ちた。
 次の瞬間には、恋なんていったことに気恥ずかしさが込み上げ、誤魔化すように笑った。

「それなら俺と一緒に、思い出してくれるかな?」
「──え?」

 助手席のシートに手をついた渉さんが、覆いかぶさるようにして私を見つめた。

「七つも年上のオジサンじゃダメかな?」
「そんなことない!」

 とっさに反応してしまった。いくら慌てて口元を覆っても、飛び出した言葉を消すことはできない。
 恥ずかしさが追いかけるように全身を熱くしていると、渉さんは私の手を退かすと「キスしていい?」と甘く囁いた。

 こんな都合のいい展開、いいのかな。
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