夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「……込み入ったことを訊きますが、ご両親と仲が悪いのですか?」
「そうじゃないけど」

 真奈さんを男から引き離すためにいいだした、形だけの相談だったはずなのに、いつしか、心の奥にあるわだかまりが膨れだした。
 大学受験で失敗するまですごした日々が脳裏を巡る。
 将来を夢見て勉学に励んだ日々。百香は有名企業に就職してバリバリ働きそうだよね、と友人たちにいわれ続けた学生時代。夢を語り、百香なら絶対大丈夫っていわれて、模試ではA判定だった第一志望は見事に失敗。

「百香さん?」
「……あ、ごめんなさい。えっと、ほら、販売業だからまとまった休みを取るのも大変で」
「そうですか」

 深く訊いたらいけないと悟ったのか、真奈さんは穏やかに微笑む。そうして彼女が口を開き替えた時、横の椅子がガタンッとなった。

「お見合いを断るいい方法、知ってるぜ」

 真奈さんを口説いていた男は、にやにや笑って私の顔を覗き込んだ。
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